第1話

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うめく綺。僕の綺を挟んで向こう側には雷照がいた。刀気を飛ばて斬ったのか? 「あまりぼうっとしないでくれ。守りながら戦うのは結構しんどい」 そう言いながら綺は両腕をめいいっぱい広げて、そして大きな拍手を一回した。 〝パァン!″ 拍手とは思えない大きな音と、すさまじい光が綺の手から発生する。直後、雷照がうめきながら地面に足をついたのが見えた。 「え?」 そして、雷照がただ足をついているだけじゃないという事に、僕は気が付いた。雷照の右腕が地面に落ちていた。全く何が起こったのか分からない。さっきおこったのは光と音だけなのに、なんで雷照の腕が無くなってるんだ?  なんか、さっきからずっと僕は蚊帳の外のような気がする。良く分からないな事だらけだ。 「そうか? これはお前にも分かるはずだ。簡単な事だよ。影鬼だ」 綺はそう言いながら僕らの正面を指差す。そこには、さっきまでいなかったはずの鬼が二匹いた。 「雷照にやられないように、あらかじめ影鬼を隠れ鬼の能力で地面んに隠してもらっていた。そして、私がお前をかばって斬られた時に生じた奴の隙を突いて、私が光を発生させる。それと同時に影鬼は地面から出る。影鬼が影で攻撃できるのを利用したんだ」 「なるほど。影を延ばしたのか」 「その通り。いくら奴でも、光の速度で伸びてくる影を避ける事は出来ない。まあ、影鬼が生きている事を知られていたら避けられていただろうな」 良く見ると影鬼の片手には真っ二つに折れた刀が握られていた。雷照の鉄の腕を切り落とす際、耐えきれずに折れたんだろう。 「ふっ、ははは・・・ 流石は火の鳥だ。あっぱれだよ」 雷照は腕を抑えながら苦しそうにそう言った。気が付くと雷照の肌は普通の人間の肌に戻っていた。 「あいつは右親指に鉄の指輪をしていた。そしてその鉄を自分の体に映していた。という事は、右腕を切り落としてしまえば鉄にはなれない」 綺はそう言った。よく相手を観察してるな・・・ 僕はあいつが指輪をしている事にすら気が付かなかったぞ。 「さて、鉄になれなくなった今じゃあ、あいつの息の根を止めるのは難しいことじゃない。今度は純ちゃんにもちゃんと手伝いをしてもらうぞ」 「え? 綺だけでもあとはやれるだろ? いや、当然手伝いはするけれどもさあ・・・」 「いや、お前の助けなしではちょっときついな」
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