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なんで? と僕はこの時言いたかった。でも、僕が言う前に僕は綺によって上空まで引っ張り上げられてしまった。ちなみに綺は翠も僕を持っていない方の手で抱きかかえていた。
「おいおいおい! 何だよいきなり」
「お前、今雷照の刀気で首を切り落とされる一歩手前だったぞ! 気付かなかったのか?」
そんなの、素人の僕にどうやって気付けっていうんだよ・・・ 能力はあったとしても経験はゼロなんだ。
「まあ、空の上のほうが話はしやすいだろう。作戦会議だ」
僕の難しそうな顔を見て気を和らげようとしてくれたのか、綺はそう言って僕に微笑みかけてきた。やっべ、かわいい。
「お、おう。それで、作戦ってのは?」
「さっきも言ったが私一人ではあいつを倒すのはちょっとしんどい。理由が分かっていないみたいだから説明するけど、何度も言うようにあいつの能力は『映す』だ。自分の体に触れたものの性質や能力を体に反映させる事が出来る。つまり、私が炎で攻撃しても、奴は炎が皮膚に触れる瞬間に自分の体を火に変化させて防ぐから、攻撃した意味がない。火を火で炙るような感じになるだけだ。まあ、映すのに一秒ほどかかるから、正確には触れた瞬間ではないんだがな」
綺は地上から来る刀気をうまい具合にかわしながらそう言った。
なるほど。綺の能力ではなかなかダメージを与えられないから僕に手伝ってほしいと、そういうことか。
「その通りだ。性質を映し終えるまでの約一秒の間にダメージを与えなくてはならないからな。私の炎が一秒間当たった所で、良くて火傷だ。大怪我を負わせようと思ったらついさっきの大爆発を連発しないとだめだ。だが、純ちゃんの刀なら奴をぶった斬るのに一秒も時間はかからない」
「おーけ、おーけー。それで、どうやって僕は動いたらいいんだ?」
「そこんところはアドリブだ。小細工が通用するほど、相手は間抜けじゃない。たとえ何らかの作戦を立てた所で、二人だけで相手をするんじゃすぐに崩されるのが落ちだ」
アドリブは苦手なんだけどなぁ・・・ 僕は死神になってから少ししか経ってないし、勝手に大暴れしていた時の記憶なのか、なんとなく刀とか羽の出し方は分かるんだけど、それでも、やっぱりまだ素人なんだよ。
「どうしたらいいんだよ・・・」
ネガティブな考え事をしていたら、いつの間にか声に出ていたらしい。僕は慌てて綺の方を向いた。すると綺は、
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