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「心配するな。適当に隙を見て刀を振り回せばいい。純ちゃんも私も体全部を吹っ飛ばされない限り死なないんだし、とにかく思い切ってやるんだ。いいな?」
と言ってきた。まったく、綺はポジティブな奴だよ。
「そうだな。今やらないと後で沢山の人が困るんだ。さっさと片を付けよう」
そうだ。ポジティブにいかなくちゃな。
「よし! それじゃあ、地上に降ろすぞ。私は純ちゃんと翠くんを一緒に降ろして先に雷照とやり合ってるから、純ちゃんは翠くんを少し離れた所に寝かせてから合流してくれ」
そう言って綺は地面に向かって降下を始めた。空に向かって刀気を放ち続けていた雷照は僕らが降りて行く方へ走りだした。
「おい、まずくないか?」
「大丈夫だ。あいつが来るよりも少し早く降りれる。ちょっとつかまっていてくれ」
そう言うと綺は僕がつかまる前に降りるスピードをぐんと上げた。そして、さっきまで地面に80度ぐらいの角度で降りていたのを30度ぐらいにした。一気に寺の敷地から離れて行く。
「よし、そろそろ降ろすぞ」
綺が突然そう言った。え? まだ地面まで20メートルほどありますけど・・・
「大丈夫だ。死神ならこれぐらい容易く着地できる。 ・・・はずだ」
「!?」
もう何も言えねぇ・・・ なんだ? 死神だから骨折っても治るってか!? 死神でも怪我したら痛いんだぞ?
「そらっ!」
綺は僕の了承も得ずに、突然僕と翠を地面に放り投げた。僕は慌てて空中で翠をキャッチし、地面に背中から落ちる。
ここで想像してみてほしい。もしあなたが時速300キロの飛行機から地面との角度30度で放り出されたら、果してどうなるだろう。答えは多分、『大怪我をする』のはずだ。だが、今回の条件に『あなたは死神です』というのがあったらどうだろうか。今度は想像しなくてもいい。どうなるか僕が教えてあげよう。
僕は着地(地面との衝突)をする直前に羽を出して体を守った。当然、羽は地面との摩擦でズタズタにはなるが、僕の羽は翠と違って霧でできているため痛みは感じない。その為、何とか怪我なく着地する事が出来た。正直、結構ホッとした。
「奇跡だ・・・」
思わずそう言ってしまったくらいだ。
「そうだ! 参戦しないと」
僕は思い出して飛び起きる。振り返ってみると山の中から火が上がっていた。
僕は吹っ飛んだ羽を再度作り直して、火の上がっている方向へ飛んだ。
「見つけた」
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