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当然の事だが、現場では綺と雷照が戦闘を繰り広げていた。僕は深呼吸をして可能な限り自分を落ち着かせる。
僕ならやれる。空手と剣道を習ってたし、今の僕は死神なんだからきっと勝てる。そう僕は心の中で自分を勇気づけた。
「よっしゃああっ! いくぞ!」
そして僕は自分に喝を入れて一気に雷照の方へ急降下し、全力で殴りかかった。
「やっと来たか!」
雷照は綺と戦いながら楽しそうにそう言って、僕の最初のパンチを軽々とかわした。
「まだだ!」
僕は体勢を立て直し、絶え間なく雷照に攻撃を続ける。そしてそれと同時に綺も炎をまとった拳で攻撃を開始した。
「くっ」
雷照は左腕で防いだり体をひるがえしてかわしたりしていたが、きつくなったのか短くうめいて後方にジャンプした。
「逃がすか!」
綺はそう言って「ボアッ」っと口から炎を吐きだした。炎は容赦なく雷照を包み込む。
だが、炎では雷照にはそれほどダメージは与えられない。つい先ほど綺が教えてくれたように、すぐに体を炎に変えられてしまうからな。
「でも、僕の拳は効くはずだ!」
そう、炎とか電気とか毒は効かなくても、拳とか刀の物理的攻撃は効く。僕は炎の中に突っ込んでその中心にいる雷照の顔面に全力で右ストレートを放った。炎の中では視界が悪いのか、雷照は避ける事もせずにモロに僕の攻撃を喰らって吹っ飛ぶ。 ・・・それにしても死神の体は案外便利だ。痛みは感じるものの火の中に突っ込んでも大丈夫だからな。
雷照は木を何本かなぎ倒して地面に倒れた。その大きな隙をみすみす見逃す僕ではない。僕は前方に大きくジャンプしてかかと落としを放つ。
〝ドゴォッ!″
地面が砕ける音がする。雷照は僕のかかと落としが直撃する直前に飛び起きて背後に飛びのいた。要するに、かわされた。
だが、こっちは二人組だ。攻撃がこれで終わる訳がない。僕が視線を下から前へ移した直後、僕の横を綺が凄いスピードで通りぬけた。
これで終わりだと思った。雷照は無理に後ろに飛びのいた所為で体勢を崩しており、綺の攻撃をかわせるような状態ではなかったからだ。まあ、結果的にはかわせなかったんだが、雷照は驚くべき事にこっちに突っ込んできた。綺がパンチを繰り出そうと腕を引いた時に、雷照がこっちに走って来たのだ。
綺は慌ててまだ浅く引いただけの腕を突いた。
〝グシュッ″
貫いた。綺の腕が、雷照の左胸を・・・
「え?」
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