0人が本棚に入れています
本棚に追加
そう父さんが言った瞬間、〝ベキベキ″という音と共にさっきまで燃えていた森が凍りついた。
「氷鬼・・・」
「その通りだ。しかも、それだけじゃない」
気が付いたら周りには鬼が大量に立っていた。地面から出て来たのか? それにしてもすごい数だ。全部でざっと五十匹はいるだろう。
そして、その中の数匹の鬼が雷照を囲み、両手を突き出して雷照を中心とした円形のシールドらしきものを張った。魂鬼だろう。これで魂を回収するみたいだ。
「さて、もう一人の純の話はとりあえず置いといてだな、綺の話しに移るぞ」
そう言うと、父さんは話しだした。
「雷照はお前らと戦う前に、夫婦岩で魂を二つに割っていた。魂を分けるときは必ず本体とそれ以外に分かれるから、自動的に本体じゃない方の魂は使えなくなる。雷照は最初から半分の力で戦っていたってことだよ。だからお前らでも雷照を倒す事が出来たんだ。しかし、雷照にとって魂を分ける事は不利な事ばかりじゃない。分割した魂は本地以外なら他に憑依させる事が出来る。そして雷照は計画通りかどうなのかは知らんが、倒れる直前に綺の中に魂を半分入り込ませている。そのせいで綺の人格が現在進行形で荒らされているんだ。多分、記憶をいじられているんだろう」
「このまま放っておいたら、綺はどうなるの?」
僕が恐る恐る聞くと、父さんは答えた。
「綺の記憶が滅茶苦茶に荒らされた挙句、良いように改ざんされ、下手をしたら綺が洗脳されて敵側につくかもしれない」
そんな・・・ 綺が、敵に・・・
「綺を助けられるのは純、お前だけだ。綺は何としてでも助けなくちゃならん。じゃないと、大変な事になってしまう」
「当たり前だよ。助けない訳がないじゃん。で、どうしたらいいの?」
僕は父さんに自信たっぷりでそう言った。綺が綺じゃなくなるなんて有り得ない。
「さっきお前に綺に触るなって言ったのには意味がある。綺を救うにはまず綺の体に触れる。そうすると、お前と綺では綺の方が持っている力は大きいからお前は綺に取り込まれる。そこからは一仕事しなくちゃならん」
「それって、大変な事?」
「ああ、かなり危険な仕事だ。下手をしたら綺の人格に取り込まれて一生帰って来れなくなる。絶対に取り込まれるんじゃないぞ」
「取り込まれるって、どんなふうに取り込まれるんだよ」
「そりゃ分からん」
分からんって・・・ 本当に大丈夫なのか?
最初のコメントを投稿しよう!