第11話 そして森へ

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「ところで使えそうな道具持って来たんで、見てもらえますか?」 とバックパックに入れた斧やナタなどを取り出す。 「おぉ、斧持って来たんだ。ちょっと錆びてるけど使えるだろう。」 「研ぎ方がイマイチわからないんですけどね。」 「まぁまたその内教えるよ。」 「じゃあ、今日行こうと思ってる場所へ出発しようか。」 「はい。」 北海道犬の亀ちゃんを先頭に、渡瀬さん、そして俺と列になって歩き出した。 亀ちゃん、渡瀬さんとも意外と歩くのは速い。ここら辺りの森は平坦な部分も多いのだけど、それでも結構スタスタと歩いて行く。 俺はその背中を見ながら、今は自分に出来る事をやるしかない。それが何かさえよくわからないけれど、この人は俺の知らない事を何か知っているような気がする。それを教えてもらえるかわからないけれど、見ているだけでも何か勉強になるはずだ。 そんな事を思いながらも、しばらく歩いていると、ふと振り返り、「歩くスピードは速くない?」と訊かれた。 「いや、大丈夫ですよ。」 「意外と山歩きは慣れているようだね。」 「えぇ、子供の頃は山行って遊んでましたからね。低い山ばかりでしたけど。」 「いやいやそれがいいんだよ。感覚として子供時代に培われたんだろうね。」 「亀ちゃんが良いペースで歩きますね。」 「そう。こいつが一番森の歩き方知ってるからね。彼がリーダー。賢いよ。」 「確かに賢そうな顔した犬ですね。」 俺はどちらかというと犬は苦手なので、最初の頃はそんなに亀ちゃんと触れ合わなかった。でも確かに賢い犬だと思った。まず無駄吠えする事がない。吠えるのは何か合図する時ぐらい。そして先頭を歩いていても、後ろの渡瀬さんが歩みを止めると、すぐに気付く。これは良いパートナーだろうな。 そして1時間ほど南に歩いた場所がその日の作業場所となった。 「さぁ、今日はあの木を伐ろうか。」 その日から、森の中での学びが始まった。
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