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第12話 森での学び
山仕事と言っても渡瀬さんの言うようにあくまで「仕事半分、遊び半分」というスタンス。だけども、秋から冬にかけては一番山仕事が捗る季節でもあり、やる事は沢山ある。
木を伐ると言っても、本格的な林業のように一日に何十本と伐採する訳ではない。薪にする分や木彫り用、時には建材代わりに使うような木を一日に数本伐る。伐る木は「萌芽更新」と言って再び再生する可能性の高い広葉樹がメイン。そして季節によって伐る時期と伐らない時期があるのだけど、伐る木も森の環境を大きく変えないように吟味して選ぶ。要は必要最低限の物を森からいただくような感じ。
そして木の種類や太さによって、斧、鉈(ナタ)、ノコギリを使い分ける。エンジン付きチェーンソーは使わない。理由は化石燃料を燃やすというコスト面のデメリットはもちろんあるのだけど、それ以上に音と振動が嫌いだそうだ。そしてチェーンソー自体の重さ。持ち運びが負担になる。
渡瀬さん曰く、「木って何十年も掛けて毎年数ミリ単位で成長してきた訳だよ。それをチェーンソーで一瞬で伐るんじゃなくて、やっぱり人間も手間掛けて伐るのが良いと思うんだ。」
俺もその考え方に素直に共感出来たし、イチロー選手のように無駄な動きなく斧を振る渡瀬さんを見て、斧で木を伐る事を学びたいと思ったのだ。
そして森の中を歩きながら、野草やキノコ類を見つけては食べれる物を教えてもらったり、採集したり、帰る前には川で魚を獲って、美味しい食べ方や干し魚などの保存の仕方を教えてもらったりした。
ただしキノコは難しい。というのはやはり毒キノコ。これは間違えやすい種類のキノコもあったり、乾燥している時と湿っている時と形が違うキノコもあり、ひと通り教えてもらったからと言っても、自分の判断だけでキノコ狩りする事はしない。
学ぶことは山ほどあるけれど、だからと言って一気に1から10まで教えてもらう訳でない。1つ1つの事をきちんと理解して、自分自身で実践してみて、また違う方法を教えてもらったり、時には禅問答のようにヒントだけもらって、数日自分で考えてみて、答えを出してみるとか、自分自身の身になるように教えてくれた。
いずれ山仕事をするにしても自分一人でする訳だし、その時きちんと自分で判断出来るように教えてくれているのだろう。
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