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第11話 そして森へ
「鳥さん、おはよう。」
「鹿さん、おはよう。」
「木の皆さん、おはよう。そしてよろしく。」
そんな事を心の中でつぶやきながら森の中を歩いていた。家を出発して30、40分ぐらい経ち、太陽も少し昇ってきたようだけど森の中はまだまだ暗い。
しかし暗い森を歩く不安感が全くない。時には熊と出会うかも知れないけど、その怖さもない。新たな気持ちで触れ合う森への挨拶して、これから宜しくお願いしますという謙虚な心で歩いている自分がいた。そもそもそんなに謙虚な人間ではなかったはずだけど。
先日通ったように、一度川まで出る方がルートとしてはわかりやすいのだけど、距離としては遠回りになるので、少しショートカット気味に渡瀬さんの家のある西の方向へ歩いた。
途中に標高は高くはないのだけど、急な勾配の山があるので、どうしてもそこは遠回りしないと行けないけれど、なるべくその斜面に沿って西方向へ行くの時間的にはロスも少ないだろう。
途中で一度来た事がある岩場の水飲み場がある所に出た。ここからは30分も掛からないだろう。
そして渡瀬さんの家に着いた頃には、日もすっかり明けていた。家の前に立っている渡瀬さんを見つけ、小走りで近付いた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「今日からよろしくお願いします。」とペコリと頭を下げる。
「ここまでどれぐらい時間掛かった?」
「1時間半ぐらいですね。」
「あぁ、そうか。じゃあ結構早くに出発したんだねぇ。」
「えぇ、5時過ぎに出ました。」
「まぁこれからはここまで来ないで、森のどこかで待ち合わせとか、時間もゆっくりすればいいから。またあとでこの一帯の位置関係とか教えるよ。」
「とにかく仕事半分、遊び半分みたいなものだけど、怪我だけはしないように。そして焦らずゆっくりやろう。」
「はい。」
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