第1話

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 吉本隆明氏が亡くなって、まだ浅い。難しそうな著書は一冊も読んでないのに、私が吉本さんに隣のオジサン的な親近感を抱いていたのは、図書館で偶然見つけた「なぜ、猫とつきあうのか」(河出文庫)という本のおかげである。  アノ吉本さんがなぜこんな猫の生態本をーと、驚きと興味が湧いて手にとったこの本、いくら私が幼い頃から猫が好きで、その辺の人より猫のことを知っていると自負していたといえども足元にも及ばないほど猫を愛し、そこから得た知識の豊富さには、ど肝を抜かれたものなのである。、  吉本さんは幼い頃から猫にかかわっていたようだ。日々の暮らしに猫がいる。私もそうだった。だからこの本に出会えてとてもうれしい。この本を読まなければ吉本さんと何のつながりもなかったし、これをきっかけに家族問題、少年問題に関する著書を読むこともなかったろう。亡くなった時も次女で作家の吉本ばななさんが「最高のお父さんでした」とコメントした際に号泣してしまったのは、猫を通じて知り合った近所のオジサンがいなくなってしまった寂しさが押し寄せたからである。  ぜひ一度、お会いしたかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加