第3話

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 両者高度な洞察と騙し合いだ。  ……今の状況下、これ以上あたしたちが欺いている事が知られるのはサタンに不要な猜疑心を与えてしまう。そうしたら他の仕掛けも気付かれかねない……  サクラは観念したようにズボンのポケットから自分の携帯電話を取り出す。 「これがサクラちゃんの携帯」 「下手な言い訳や弁解をしないところは御立派です。やはり二台持っていましたね」 「でも持っている携帯全部なんて取り決めはしてない。あたしとの約束は<使った携帯の破棄>ってことじゃん。二台あることは今わかった事だから」 「成る程」  サタンは小さく頷く。言葉を額面だけ受け取れば確かにサクラのロジックも成立しなくもない。だがだとしたらどう出るか……サクラの答えは子供の反論のようなものだ。元々携帯電話を完全に破棄させるのがサタンたちの目的なのだからこれで妥協するはずがない。 ゴリ押ししてくるか、ここはなんらかの追加条件を出すか…… 「じゃあ追加。このサクラちゃんの携帯も同じく破棄する代わりに…… サタン、アンタが仮面を外すってどう?」  どこまでも引かないサクラ。サクラと拓たちだって、何重にも対策を考えている。  だが、サタンたちの次の手は予想外のものだった。 「断ります」  サタンがそう答えた次の瞬間、サタンの袖の中から4連発デリンジャー、COP357が飛び出した。腕に仕込んでいたのだ。それを見た瞬間、咄嗟にサクラは涼に飛びつき、拓もとっさにしゃがむ。だがサタンの標的は違った。サタンは銃口を滑らせ、引き金を引いた。 「えっ!!?」声を上げる涼。 「ぐわぁっ!」  低い銃声と共に悲鳴を上げたのは柴山だった。弾は柴山の腹部に命中した。悲鳴を上げる速見。柴山は呻きながら倒れる。 「約束ですから、お二人や高遠様に手を出しません。しかし、彼等をどうするかという取り決めはなかったはずです。よって……」再び引き金を引いた。今度は胸部に命中した。これは致命傷になった。柴山は低い悲鳴を上げ倒れた。 「一人亡くなりました。もしサクラ様が携帯電話を破棄していただけるなら、私も拳銃を捨てましょう」 「撃つな!」とサクラは叫ぶ。 「ええ。撃ちません。駒が一つ無くなりました。後一つをどうするかお考え下さい」 「絶対に撃つな」  サクラが再び釘を刺す。実はこれはサタンに言ったものではない。盗聴器で状況を見ている片山に言ったのだ。
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