第3話

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力づくで涼を奪還できるが今銃を手にしているのはサタンだけだ。片山の場所から埠頭まで300m近くあり素人の片山では狙撃に期待できない。 「分かった。あたしの携帯電話は破棄する。データーカードとバッテリーは抜くからね」 「御配慮頂きありがとうございます」  サクラは舌打ちし携帯電話を取り出し、裏を空けカードとバッテリーらしきものを抜き取った。そして涼に梱包した梱包した袋を開封するように言う。 「だ……だめ…… サクラちゃん…… 私……」  柴山の死を目撃し、恐怖が甦り萎縮し震えが止まらない。とてもできそうにない。  ……サタンのボディーチェックを見落としたのは私だ……  ……それで柴山さんが死んで…… それでなんだかわからないけど不利に…… 「じゃああたしがやる」とサクラがやろうとした時、それをサタンが止め、速見を指定した。サクラも拓も信用できない。逆にサクラたちはサタンたちを信頼できない。となれば第三者に近い人間しかない。サタンの案にサクラが追加で答える。 「もう涼っちはいいでしょ? このまま速見とチェンジ! こっちで確保させてもらうわ。腕に銃隠してるようなヤツを信用できるかい」 「信用できないのはお互い様でしょう。了解です、速見に交代させます」  そういうとサタンは手にある4連発デリンジャーを海に捨てた。  指名され、オドオドと速見がやってきてサクラから携帯電話と梱包した塊を掴んだ。  サクラは震える涼をしっかりと抱きしめ、チラッと振り返る。 拓とのアイコンタクト。 ……やる……? 予定は狂ったが今、涼は取り戻した。携帯電話もまだ海に流されていない。  ……サタンの警戒は解けてないぞ? 勝算はあるのか? 拓はテレパシーでサクラに問う。頭の中で問いかければサクラが勝手にその声を受信してくれる。サクラは小さく「ニヤッ」と笑った。それを見て拓はすでにサクラが行動に移していることを知った。サクラの相談はほとんど事後承諾で確認のようなものだ。サクラが仕込んだとすれば、タイミングは……もうじきだ。  色々起きた直後だ。今サタンたちは現状自分たちが主導していると思っている。その錯覚がある今こそ好機だ。拓もサクラの決意に同意した。 「いい朝だ。釣りでもしたいもんだ。一服してもいいかな」  拓は暢気にポケットに手をいれ煙草を取り出す。
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