第3話

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だがすぐにサタンが「今しばしお待ちを。煙草とライターはポケットに戻してください」と油断ない。サタンの警戒は厳しい。拓はため息をつき煙草をポケットに戻す。 「スズっち……」聞こえるか聞こえないか……本当に小さな声でサクラが囁いた。 「何かあったらまずその場に伏せて。右手に倉庫があるでしょ? ドラム缶がある。そこまで行ってそこでできるだけ体を地面につけてできるだけ小さくなって」 「ど……どういう……意味?」 「ロックンロールの時間……ってヤツ……かな? タイトルは<生き残る>♪」 「…………」  それ以上はサクラも語らない。涼は拓を見た。二人の表情がどこか鬼気迫る雰囲気を宿していた。【何かあったら】というのは正しくない。サクラや拓は【何かを起こす】のだ。その事を涼は悟った。  全体の距離は変らない。  サクラと涼。サクラとサタンが対峙し、両者の間の距離は12m。拓はサクラの3m後ろに控え、<死神>たちはサタンの後ろ5mあたりで集まらず少し広がり立っている。  速見が作業を終えた。サタン、そしてサクラを見る。両者頷き速見は密封した携帯電話とブイ、錘のセットを海に投げ込もうとする。 「お待ちを。ここでは湾内を漂い簡単に回収されそうですね。速見君、申し訳ないが埠頭の先からそれを投げてもらえないですか? そうすれば間違いなく沖に流れるはずです。構いませんよね、サクラ様、捜査官」 「速見はこっちの駒だ。ダメだ。埠頭の先に行くまで<死神>たちの間を通り抜ける。その時<死神>たちに捕まったら俺たちの損になる。速見もそうだが、お前たちが携帯電話を破壊しないとも限らない」 「信用をすっかり失ってしまいましたね、私も」 「先に信用関係を壊したのはお前じゃん」とサクラも鋭く突っ込む。サタンはヤレヤレという仕草をし「約束しましょう。速見には手を出さない。彼をどうするかは投下後の再交渉でということでは如何でしょうか? その代わり彼が埠頭の先から投下する……それが条件です」 「ンな細かいコトまで……」と呆れるサクラ。拓はサタンの要求を飲んだ。拓の了解を得て、速見は小走りに埠頭の先まで走っていく。その間にサクラは涼に拓の傍に行くよう告げた。  サタン側、それを黙認。 「拓さん」 「無事でよかった。ゴメンね、こんな目に合わせて」 「いいんです。それより……」  涼が何か言いかけた……その時だった。
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