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雨の日のことだった。
少年は走った。
走って走って走って…
自分が今、何処を走っているのかさえもわからないくらい、
ただただ、がむしゃらに走り続けた。
細い裏地に入り、曲がり角を利用して追手を撒こうとする。
何度も何度も角を曲がり、時折後ろを振り返る。
それをしばらく繰り返し、少年は息絶え絶えである。
やっとのことで撒けたと、そう確信したときだ。
何かに足を絡ませてしまい、少年は勢いよく転ぶ。
とっさに手をついたお陰で、
地面に顔面から突っ込むことは免れたが、
手のひらを血と土だらけにしてしまった。
降りやまない雨で、傷口から出てきた血が滲む。
足元を見てみると、何時何処から現れたのか、
見事に足に『ツル』が絡み付いている。
その『ツル』は、追手の方から延びていた。
ヤバい…。
一瞬で少年は、自分の身の危険を悟った。
急いで立ち、また走ろうにも、 『ツル』が絡み付いていて、
びくともしない。離れない。
早くこの場を去り、逃げなければならないのに、と焦り、
上半身だけが前へと進みまた転ぶ。
そうしているうちに、近づいてくる、いくつかの足音と声。
その近づいてくる二つの音に
恐怖心を覚えていても、
少年は動くことができなかった。
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