第11話

4/4
前へ
/4ページ
次へ
グレードだけがすべてだとは思えませんが、せっかく移植する受精卵がどの程度の物なのかはとても気になりました。 しかし、診察ではグレードについて全く話が出ないまま移植の準備が進んでしまいました。 病院によってはグレードを調べない、というか患者に教えないというところもあるようなので、この病院もそうなのかもしれない、と考えたりしていたら尋ねるタイミングをのがしてしまいました。 たくさんの候補があって、どの受精卵を移植するのか選ぶ必要があれば検討の材料としてグレードが提示されたのかもしれません。 私の場合はたった1個の受精卵でしたから、グレードがよくても悪くてもそれを選ぶしかないわけで、たとえグレードが低くても望みをかけるしかないのですから、グレードを気にする必要はないのかもしれません。 結局、私の方からグレードについて尋ねるのは気が引けたため、聞けませんでした。医師の方からも特に説明はありませんでした。 なんだかもやもやした思いのまま移植台に上がり、あっという間に移植が終わりました。移植自体には痛みはありませんでした。 うまく着床してくれるだろうか。 育ってくれるだろうか。 心配はつきませんが、とりあえず一仕事終えたと思うと、なんだかほっとしました。 午前中は有休を取得していたため、カフェに入り、しばしの休息を取りました。 なぜだかふいに頭に浮かんだメロディーは、久松史奈の「天使の休息」でした。 お酒を飲むことはできないけれど、とりあえず温かいカフェオレで少しだけ休息です。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加