耐ヘ

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 次の日、巌と千代と千夏の三人で児嶋医院に出向いた。  千夏は留守番の予定だったが、ぐずついたため連れてきた。  ガラッ  千代が木戸を開けると甘い香りが漂う。丁度廊下からこちらを覗く児嶋の姿があった。 「おや、千代さん・・・・それに千夏ちゃん・・・・・・」  さらに奥に人影が見えて、児嶋は近づいた。 「ご無沙汰しています・・・・・・児嶋先生」  外套を羽織った男は下げた頭をゆっくりと戻し、児嶋にはその顔が巌だと気づくまでに時間がかかった。 「ああ、中津さん・・・・お帰りなさい。まあ、どうぞ」  巌を先に上げ、児嶋は千代と目配せをした。 「せんせー、はい!」  千夏は持っていた折り紙の花を児嶋に手渡した。 「お。お花だね~。すごいな、千夏ちゃんは。冬でも花を咲かせるなんて」  児嶋の反応に笑みを見せる千夏。 「寒かっただろう。丁度甘酒を温めてね・・・・いかがかな?」  千代と千夏が廊下を進むのを見ながら児嶋はそう話した。  診察室とは逆の部屋に三人を案内した。待合室として使っている場所だ。そこの長椅子に座らせた。 「今甘酒を持ってこよう」 「いえ、お構いなく・・・・」  巌はそう答えたが、児嶋は聞かずにさらに奥の部屋に向かった。戻ってきた彼の手には湯呑み茶碗が乗ったおぼんがあった。 「さあさ、冷めないうちにおあがんなさい」  千代と千夏で一つ、巌にも湯呑みを渡し、余った一つを自分の手に持って掲げた。 「無事に戻って来れた祝いだ」  ふーっと息を吹きかけて児嶋は甘酒を啜った。
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