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パンッ!
一発の銃声と同時に巌の右腕に痛みが走った。すぐさま伏せながら木の陰に逃げ込むと、さらに銃声が鳴った。
パパパパンッ!
『おい、ジャップが逃げるぞ!』
『へい、チャーリー!大丈夫か?』
その銃声は仲間のアメリカ兵が彼の姿に気づいて発砲したものだった。
『ああ、トム・・・・・・いや、大丈夫じゃない。足を撃たれた』
長身のトムはしゃがんで彼の足の傷を見て、叩いた。
パシッ
『アゥッチ!』
『なに、大した傷じゃない。遠くから撃ったんだろう・・・・それか威力が弱かったんだ。弾が見えてる』
巌を追っていたもう一人の米国兵が戻って来た。
『くっそ、逃げられた!』
『まあ、いいだろ、レイモンド。やつらの巣を焼き払ってやったんだ、あいつの帰る場所もないさ』
厳つい身体のレイモンドはライフルを構えて警戒しながら、言葉を返した。
『トムがガバメントなんかで撃つから、逃げられるんだ』
『あのな・・・・そんなライフルぶちまけたら、チャーリーだって穴が開くだろ?軽傷で済んだんだ、ラッキーだよ』
レイモンドはライフルを下ろし、チャーリーに近づいた。
『何でやらなかった?怪我は足だろ?腕じゃない』
地面のピストルを手にとってみたが、弾切れというわけでもない。
『 “私を殺せ“ って言うから・・・・どうしていいか分からなかった』
トムはチャーリーの言葉に笑った。
『そいつは、たぶん、キィミーって言ったんだろ?』
『ああ、そうだ』
『キィミーは日本語で "あなた"って意味だ。チャーリー、君を “キィミー“ って呼んだだけさ』
攻めていた部隊が帰ってきたようで、アメリカ兵の姿がちらほらと見えてチャーリーの元にやってきた。
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