黒イ夜

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『怪我人か?』 『ああ、キャプテンラッセル。チャールズ・カーチスが足を撃たれて・・・・でも、軽傷です』  近づいた年輩の男にトムは答えた。 『先程、一人の日本兵がここをウロチョロしていたので、まだ充分に警戒が必要です』  レイモンドは手をこめかみに当てて敬礼をしながら口にした。 『その、日本兵に足をやられたのか?』 『はい』 『いいえ』  イエスと答えるレイモンドとノーと言うチャーリー。二人は顔を見合わせた。 『いいえ、彼は僕を撃たなかった・・・・そして手当てまでして・・・・』 『ジャップが手当てなんかするもんか。自分の仲間でさえ殺すやつらだ』  レイモンドはそう返したが、ラッセルはしゃがんでチャーリーの太股に巻かれた脚絆を見た。 『いいや、このゲートルは日本兵のものだ・・・・・・それに、この封筒の文字は日本語だ・・・・』  チャーリーの足元に落ちていた手紙を拾った。 『・・・・なんて書いてあるんですか?』  封筒に書かれている文字をラッセルは読んだ。 『ナカーツ・・・・たぶんな。これは漢字という文字だ』 『彼の名前でしょうか?』 『さあな・・・・・・これが本人の物かどうかも分からない。だが、これが日本兵の物ということは間違いない』 『そんなのつけてたら、足が腐るぜ?』  チャーリーを立たせようと近づいた仲間がそう言った。 『アウッ・・・・』  レイモンドも手荒く彼の腕を掴んで立たせた。 『やつらの巣は焼いた。生き残りが攻撃してこないとも限らない。とりあえず、戻るぞ』 『イエス、サー』  ラッセルの言葉に一同は敬礼して、森の奥へと消えて行った。
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