耐ヘ

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「児嶋先生!児嶋先生!」  二階建ての木造家屋。木の板に児嶋医院と書かれた物が玄関先についているだけの家。  その廊下を勢い良く駆け抜ける女性に、白衣を着た男は患者の診察する手を止めた。 「中津さんとこの、お千代さんじゃないか・・・・そんなに慌ててどうした?」  息を切らしながら千代は男の前で止まった。 「児嶋先生!・・・・・・主人が・・・・帰ってきて・・・・・・」  児嶋は耳から聴診器を外し、千代の顔を見た。 「何?・・・・それは・・・・・・本当かい?」  唖然としている児嶋に千代は何度も首を縦に振った。 「・・・・ああ、今・・・・診察終わらせるから、ちょっとそこで待ってて」  児嶋は指差してそう言うと、千代はおとなしく廊下に出て待合所の椅子に腰かけた。  数分佇んでいると木戸が開いた。 「待たせたね・・・・そこじゃ寒いだろう。中入って」  巌とは違い、児嶋の身体は大きくがっしりとしていた。  祖父が欧米人だという話を聞いたことがあり、日本人にしては彫りも深く、目も鼻も大きい。 「すみません、突然・・・・・・」 「いや、血相を変えてきたから何事かと思ったが・・・・まさかね・・・・・・」  診察室の椅子に千代を座らせて自分も席に着いた。 「今まで何の連絡もなかったんだろ?」 「傷を手当てしていて連絡ができなかった・・・・と」 「そうか・・・・」  白髪交じりの頭を掻くと児嶋は千代を見た。その雰囲気を感じ取って千代も口を開いた。
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