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「すみませんが・・・・・・この前のお話は・・・・」
「あ?・・・・ああ・・・・・・そうだね。残念だが、そういうことなら仕方ない・・・・」
「それとこれ・・・・お返しします」
千代は灰色のネクタイを袂から取り出し、児嶋に渡した。
「家の布団から・・・・・・」
「ああ・・・・・・そうだったか。どこかに仕舞ったものとばかり・・・・」
ネクタイを白衣のポケットに入れながら児嶋はそう口にした。
「まあ・・・・良かったじゃないか。無事に帰ってきて」
「はい・・・・・・でも、前と様子が違うんです。・・・・何と言うか、不気味で・・・・」
「そりゃあ、仕方ない。遠くの見知らぬ地で幾度にも死闘を繰り広げたんだ・・・・人も変わるだろう」
千代の不安そうな顔を見て児嶋はそう返した。
「そういう・・・・ものなんでしょうか」
「さあ、私は経験がないからね、何とも・・・・・」
そこまで会話して千代は持っていた風呂敷袋から徐にお金を取り出した。
「それと・・・・火傷と傷に効く薬をいただけないでしょうか?」
「薬?・・・・・・どこか怪我でも?」
心配そうに児嶋は千代の身体を見た。
「いえ、私ではなくて・・・・巌さんに」
「ああ・・・・」
児嶋は立ち上がって隣の部屋に移動し、丸い缶を幾つか手にして戻ってきた。
「火傷の程度にもよるが・・・・あいにくうちにはこんな物しか残ってないな」
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