第4話

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距離の取り方なんて当たり前の様に身についている。 それなのに今は自分から先輩の領域に入り込んでいる事も自覚している。 先輩の反応が楽しくて、鍵を預けてみたり、我儘を言わせてみたりした。 どぎまぎしちゃって、瞬きも多い。 先輩の表情が崩れる事なんて、こんな時位だ。 その反応は全て俺の事をわかった上での事だから余計に。 胸の奥の辺りをひっかかれたみたいな感覚が残る。 先輩はしましょうか?という問いかけには必ずNOと言う。 遠慮しているのか、頼めないのか分からないけれど。 多少押し付けがましい位じゃないと、此方の協力を得ようとしない。 空巣に入られたって言った時も、顔は青ざめていて、小さく震えているのに、ついて来てとは言わなかった。 でも、押しに弱いみたいで、そういう言い方をすれば頷いてくれる。 先輩は言葉も態度も軽い物は避けるけど、全身でぶつかってくると受け止めてしまう。 それが危うい所でもある。
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