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どうやらこの少女は、自分のその良さを中々受け入れない様だ。いや、気付いてはいないだけかもしれないが。
奈月ゆかは、東京の大規模な原因不明の爆発、『アンノウン・バースト』によって両親が失ってからは、駆以外の人間から褒められた事がなかった。
だから今、杏梨の言葉に実感が湧かなかった。
千絵「なら、杏梨から料理教えてもらえばいいじゃないかしら?ちょうど今週の日曜日、買い出ししてから杏梨の家で料理を作ろうって話になってるの」
杏梨「それ、名案だね千絵ちゃん!奈月さんも是非おいでよ!私少し頼りないけれど、教えれる所は教えるよ!一緒に料理作ろうよ!」
ぱぁぁっ!とまるで太陽の様に少女は、笑顔を作る。
思わずゆかはその少女の笑顔に見とれてしまう。だからゆか自身も、杏梨を見て小さく微笑んでしまう。
そしてゆかは恥ずかしそうに、
ゆか「じゃ、じゃあ。今週の日曜日よろしくできるかな……?」
杏梨「もちろん!」
そう言い、二人はお互いに微笑み合う。
千絵もその光景を見て、笑ってしまう。
千絵「だったら決まりね。そうと決まったんだったら、あの子も誘えば?」
ゆか「えっ、いいの?」
杏梨も、千絵の言葉にコクンと頷く。
杏梨「うんっ。丁度、鹿君も来るしね。赤嶺君ともっと仲良くなりたいし」
ゆか「うん、ありがとう。それに私も丁度、椎名さんの『お兄さん』にちゃんとお礼を言いたいし」
杏梨「あはは。うん、今週の日曜はお兄ぃもいると思うし」
千絵「龍馬さんねぇ……」
皆に聞こえないぐらいの小さな声で千絵は言いながら、また一口おにぎりをかじる。
千絵「……にしても……、鹿之助達、遅いわねぇ。お昼の時間なくなっちゃう」
キョロキョロと辺りを見渡すが、まだ彼達の姿はないようだ。
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