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「貴方はいつもそうね」
男の目の前に座る女はため息をついていた。
「私のことなんて本当はどうだっていいんでしょう」
男は少し目にかかる前髪をいじりながら、興味なさそうに女の言葉に耳を傾ける。いや、傾けているフリをしているというべきか。
「そんなことないですよー」
間延びした声は先ほど発した言葉を否定する。茶色のウェーブのかかった髪をなびかせる女は、あきれたように再度ため息を吐いた後、眉を葉の字にさせ、カラーコンタクトを使用した大きな双眸を男に向ける。
「貴方はなぜ生きているの?」
困惑したような声。それは誹謗中傷ではなく、単純な問い。それを問うほど女は男のことを理解していなかった。否、理解することはできなかった。
「…考えたことありません?もし、自分が誰にも観測されずに、そこに存在するかも分からない不確定な人間だとしたら、どうするだろう?って」
女は眉を顰め、少し身震いした後、口を開く。
「そんな恐ろしいこと考えたくもないわ」
男は女が紡いだ言葉に思わず笑みを浮かべる。
「恐ろしい?いえ、絶対楽しいはずです」
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