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「肩代わりは俺デキナイノ?」
突如そんなことを言ってきたのはロン。
「何を言ってるの?
そんなことしたら、ロンが辛いし肩代わりを無関係な人間がやるなんてまず死ぬに等しいんだよ
リスクが大き過ぎる」
ただでさえ治癒は、リスクを伴うものなのに。
「サクヒは僕が死なせないから
皆は部屋から出ていってて、集中するから」
そう言って、僕はみんなを部屋から追い出した。
最後まで、低声し続けていたロンを部屋から出すのにすごく手こずったが、なんとかでていってもらえて、精神を集中させることはなんとかできそうだった。
「ソウ、ヤ...」
突然僕の名前を呼んだのは部屋にいるサクヒなわけで。
掠れた声で聞き取りにくかった。
「今から治癒するから..
少し辛いけど我慢してね
タオル、噛んでてもいいから」
そう言いながらタオルを差し出すと、サクヒはいつもより不器用に笑い、掠れた声でたしかに 、大丈夫、といった。
こんな時も笑っていられるサクヒに、僕には理解できない。
毎日笑顔を絶やさないで笑って、優しそうなその顔は慣れてしまったから治らなくなってしまったのか。
愛想笑いをずっと浮かべて、ほんとはずっと人より傷ついてるんじゃないかなと思う時がある。
戦争でよく揺らぐあの表情。
誰にも見られてな言って思っているサクヒでも、僕は気がついてしまった。
あの、見たことないくらいの寂しそうな表情を。
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