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大分と太陽が傾いた頃、遥子は力目を覚ました。頭が痛かった。何処かで打ったのだろうか?そんな事を思ったが脳が覚めるにつれ今日の出来事を思い出していく。
冥「おはようございます。あ、でも、もう夕方でしたね。」
相も変わらずニコニコと笑みを浮かべ冥が挨拶をした。遥子は即座に身構える。冥はその姿を悲しみと安堵が交じった瞳で見つめた。
冥「白川さん。もう、鬼は居ませんよ。
本当なら僕は改心して貰うように説得するつもりだったのですけど。どうも邪気が強くなっていたのでやむを得ず。」
自分の鼻先を掻きながら「未熟でした」
と付け足す。遥子は尚も冥を睨んでいた。ふと涙が溢れた。自分でも何でかはわからない。ただ涙は意思に反して流れていく。
遥子「・・・んで?」
冥「・・・。」
遥子「何でよ!?何で邪魔をするの?!」
涙を流し、激怒する。こんなことをしても意味がないのはわかっていた。それでも、何故か口が動く。
遥子「夢でも、嘘でも、幻でもいいじゃない!何で私から奪うの?!私は、私はただ、友達が欲しくて、ただ、それだけ、なのに・・・。」
遥子は崩れた。何故か屋上に戻って来ていた。コンクリートの冷たさが身を刺す。
冥「駄目ですよ。それはただ、逃げてるだけです。何かに頼って、自分の願いを叶える。なるほどそれは楽な道かも知れません。ですが、それで繋がった関係は案外脆いですよ。苦難があってこそ掴んだ友情は輝くんです。自分から行動を起こさなければ何も始まってないんです。
貴女に鬼の力なんていらないんです。貴女は誰よりも強い。それでも不安なら
僕が貴女の傍にいます。貴女と共にいたいと思いましたから。どんな関係でもいいです。頼って下さい。」
優しく遥子を抱き止め冥は語る。遥子は冥の胸に顔を埋めた。
遥子「う、うぁぁぁ!」
夏の涙は雨の様に屋上を濡らした。
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