河童

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7月中旬。学園ではもうじき体育祭をやろうという頃、冥は一人川辺を歩いていた。のどかに流れる川を冥はいつものニコニコ顔で見ていた。因みに学校はサボりだ。 冥「サボりというのもなかなか、良いものですね。開放的です。」 呟き欠伸をする。冥はかなり気紛れな性格だ。気になるものに対しての反応はもはや猫の様に見える。ふと違和感に気付いた。水の中に何かがいる。冥は緩やかにだが早急に制服のポケットから札を取り出した。対象を見極めるまでは使わない。だが危険と判断すれば逃げる位の考えでいた。 その川の中から追われている少女と醜悪な化け物が現れるまでは。 冥「っ。【腐鮹】ーふだこーですか。厄介なものですね。」 【腐鮹】とは体の半分がまさに腐っている鮹だ。普通の鮹とは違い真水でも活動が出来るため棲息範囲は広くその数も膨大だ。普段【腐鮹】は人を襲いはしない。襲うとすれば住みかを荒らされた時、もしくは繁殖期の時のみだ。だが、例外もある。人は襲わないがある【妖怪】は標的にされるのだ。 その【妖怪】とは【河童】だ。同じく水棲の【妖怪】である【河童】は【腐鮹】とは何故か敵対関係にある。となれば今自分の後ろで震えている少女は【河童】と言うことになる。河童と言えば緑の皮膚に亀の甲羅、そして頭には皿をイメージするだろうが実際は違う。人の形をしているのだ。確かに皿は存在するが普段は隠れているしそもそも人を襲い肝を引き抜くようなことはしない。冥は即座に【腐鮹】と【河童】の少女の間に入る。 冥「すいませんがここは退いて貰いたいのですが。」 話が通じるかわからないがとりあえず話しかけて見た。案の定、【腐鮹】は咆哮をあげて襲いかかってきた。人の冥はため息をつくと札を投げ五亡星の印を結んだ。 冥「放射系木の型 『木槍』」 札から先の丸まった棒が飛んでいった。【腐鮹】の体に当たるとそのまま体を水中に戻し何処かに流れていった。 冥「さよならです。」 冥は少女に向き直るとニコッと微笑んだが少女は「ひう?!」と声をあげて走り去ってしまった。
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