1.夜空とクリコロの彼

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地下街に下りると、もうコートも必要なくなった。 私は軽くなった身体で、分厚い冬物を小脇に抱えて歩く。 途中、パステルカラーの春物が目に入って少しだけ寄り道。 ミントグリーンの大きな襟はさらりとした手触り。 一歩下がって見上げたなら、作り物の小顔が何処か遠くを見つめている。 丈が……少し長すぎる。 私はこのマネキンみたく背が高くない。 加えて、こんなに顔が小さいわけでもない。 やっぱり私には合わないなと思った。 色も改めて見るとキレイ過ぎて何処に着ていけば良いか、全く頭に浮かばない。 通勤には浮わつき過ぎだし、デートに着るのもよそよそしい気がした。
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