1.夜空とクリコロの彼

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乗り込んだ東山線は結構混んでいた。 金曜日。 スマホのデジタル表示は20:04を示している。 早めに飲み屋さんに入っていた人々が帰る時間。 車内の空気が何となく淀んでいるような気がする。 けれど、栄から名古屋駅までは二駅。 私は直ぐに解放されて、再び地下街の道を歩く事になる。 クレープ屋さんに、ういろうのお店、ワッフルにお饅頭。 打って変わってこちらは食べ物のお店も多い。 あの頃は不馴れだったこの街も、今は特に何でもない。 彼と付き合う中で歩いたり、就職した事で引っ越しをしたり。 そういった事を経て、私の行動範囲も随分広がった。 目を瞑ってでも歩ける。 そんな彼ほどではないけど、私も庭みたいには歩けるようになった。 すると、不意にパンの香りが漂ってくる。 明日の朝はパンにしようか。 ふと考える。
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