1.夜空とクリコロの彼

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今さら何を考えているんだろう。 その「可愛い」にくらくらしなくなったからの今日。 その「可愛い」に違和感を覚えたからの今日。 「ごめん、やっぱり私――――」 そうやって言葉を濁しながらも、切り出したのは私だった。 そして、あわよくばそのまま電話で済めばと思った。 けれど、そんな私の思惑とは裏腹に彼は私を食事に誘った。 「今月も定休は金曜日?」 大学を卒業し、お互い就職してからは月始めに連絡しあっていた仕事のシフト。 ここ二ヶ月はおざなりになっていたやり取り。 頷く私に、彼は「六時までには行くから」と用件だけを手短に言うと直ぐに電話を切った。 重苦しい気持ちが広がった。 それと同時に、何故察してもらえないのだろうと、やり場のない苛立ちを覚えた。 我ながら自分勝手だとは思っている。
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