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「なっ、何だ……!?」
さすがに動揺した様子で、カーティスがうろたえ気味に部屋を見渡した。
両開きの扉を蹴破って、姫をさらった男たちが飛びこんでくる。
不吉な胸騒ぎを覚えて、姫は蒼白な顔であたりを見回した。
その間にも、揺れが激しくなる。
立っていることさえ困難な揺れの中で、四囲の壁が崩れ落ちた。
「姫っ!!姫さまっ!!」
もうもうと立ちこめる土煙を縫って、見覚えのある長身の人影が駆け寄ってくる。
ほっそりした体躯の、美しい若者だ。
白磁の肌に中性的な美貌、柔らかな金髪に縁取られたその顔はたおやかな気品に満ちていた。
すらりとした長身の体に薔薇色の騎士の衣装をまとい、抜き身の剣を携えている。
女性と見まごう美貌だが、切れ長の瞳は射るように鋭く、強靭な意志を感じさせた。
年の頃は17、8、ひと目見たら決して忘れられぬ美貌だった。
「姫さまっ!!」
切れ長の瞳に激しい憤怒を浮かべて、若者は姫に駆け寄ってこようとした。
予期せぬ事態に動揺しつつも、さすがに精霊族の男たちは剣を抜いて彼の行く手を阻んだ。
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