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大理石の柱を縫って、風が吹き抜けた。
悪しき魔の気配を孕んだ、かすかな風が。
湿り気を帯びた風が、姫君の薔薇色の髪を軽くなぶって吹き過ぎる。
可憐な美貌に怯えの色を滲ませて、姫は足をとめた。
蒼く射し込む月の光が、姫のたぐい稀な美貌を冴え冴えと宵闇に浮かびあがらせる。
卵形の白い顔。
ぱっちりしたアメジストの瞳。
スッと細い鼻梁。
小さな薔薇色の唇。
まだ16才の薔薇の妖精姫は、誰もが息を呑んで見とれるほど美しかった。
不安気に揺れる大きな瞳に長い睫が濃く翳を落とし、愛らしい顔立ちに神秘的な彩りを添えている。
潔癖症で高貴な内面そのままに、清楚な雰囲気が可憐な美貌にまとわりついていた。
ピンク色の巻き髪が、姫の人形めいた美貌によく似合っている。
真夜中をとうに過ぎた時刻だというのに、淡いピンクのシフォンドレスをまとい、城の広大な空中庭園を足音を忍ばせるようにして歩いていた。
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