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眠れぬ夜に、姫はよくこの空中庭園を散策した。
すべての妖精王国がそうであるように、薔薇の妖精王国も結界と精鋭騎士団に城の内外を守られていた。
侵入者など、万にひとつもあるはずがない。
(あんな予言を聞いたから、臆病になっているんだわ)
自身に言いきかせるように胸の中でつぶやき、姫は再び歩き出そうとした。
その時ーー
強い視線が全身を貫き、確かな人の気配を冷たい恐怖とともに姫は感じた。
ふりむこうとした刹那、背後から逞しい腕に抱きすくめられ、大きな布で口をふさがれた。
「うっ!!ううっ!!」
可憐な顔を歪めて、姫はがむしゃらにかぶりをふった。
(だっ、誰っ!?やめてっ!!)
恐怖に身をすくませて、悲鳴のような叫びをあげる。
しかし、布切れに口をふさがれて、くぐもった呻き声にしかならない。
「ううっ!!ううっ!!ぐううっ!!」
賊の腕の中でもがき、姫は激しく首を左右にふった。
通気性の悪い布に口と鼻をふさがれ、息が苦しい。
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