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「薔薇の妖精姫。カーティス様の命令により、身柄をもらいうける」
野太い男の声が、低く耳もとに響いた。
「ううっ!!ううっ!!」
男の腕から逃れようと、姫はやみくもにもがいた。
だが、どんなにあがいても、逞しい腕はびくともせずに彼女の細い体を押さえこんでいる。
激しく首をふっても、布切れをふりほどくことはできず、通気性の悪い布に口と鼻をぴったりふさがれてほとんど息ができない。
「ううっ!!ううっ!!」
苦しさに朦朧となりながら、姫は甲斐のない抵抗をくり返した。
(くやしいっ……!!あたしが大人だったら……!!)
妖精族の成人は18才、大人になるまで裡に秘めた聖力(ちから)は使えない。
聖力さえ使えれば、こんな賊……
身の裡から沸きあがるくやしさが、姫に突発的な力を与えた。
体をねじって、背後の男に肘鉄をくらわせる。
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