第2章

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それに、2年前のあの日から、シャルディアラやアンジェラスのいない所でこっそりシェリィに危害を加える者が急増していた。 シャルディアラが緋竜の精霊王に拐われ、前(さき)の王が亡くなったのはシェリィが手引きしたからだと、彼に怒りと憎しみの矛先を向ける輩が少なくなかったのである。 シャルディアラやアンジェラスがいくらやめるよう警告しても、シェリィへの暴力は鎮火しなかった。 現行犯でない限り犯人を特定するのは難しく、シャルディアラかアンジェラスができるだけシェリィにつき添うようにしていた。 それが無理な時は、信頼の置ける騎士やメイドにシェリィを預けていた。 シェリィ自身は、どんなに酷いことをされても何も語らない。 ただ悲しそうに目を伏せて「転んだの……」と下手な嘘をつくだけだった。 告げ口をしたくないのと、シャルディアラとアンジェラスに心配をかけたくない気持ち、その両方がシェリィにはあるようだった。 シェリィは、本当に天使のように無垢な存在だった。 驚くほど心が清らかで、人を疑うことを知らない。 また、憎しみや恨みというマイナスの感情が微塵もなかった。
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