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「シェリィさま……」
レイチェルは何とも言えない表情で、戸惑ったようにシェリィをみつめた。
涼し気な切れ長の瞳には、ひどく複雑な色が浮かんでいた。
「いいのよ、シェリィ。そんなことは気にしなくても……」
言葉を発しないレイチェルに代わって、シャルディアラは優しく言った。
「あっ、あのっ、僕、今度はレイチェルのお花も摘んでくるから……」
懸命にレイチェルを見て、シェリィは言った。
自分に冷たい態度を取り続ける相手に対しても、シェリィは何のわだかまりもなく、無邪気になついてゆく。
それがシャルディアラにはいじらしくもあり、歯がゆくもあった。
「気にするなよ、レイチェルのことなんか……行こう」
促すようにシェリィの細い肩を抱き、アンジェラスは強引に弟を部屋の外に連れ出した。
深々と一礼して、ふたりのメイドも付き従う。
壮麗な扉が閉まるまで、シャルディアラはひらひらと手をふり、とろけるような笑顔で見送っていた。
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