第2章

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「姫さま……」 視線を巡らせなくても、レイチェルが少し傷ついた顔をしたのがわかる。 ちょっと可哀想だったかしらと思いながらも、シャルディアラにはレイチェルの気持ちを茶化す余裕があった。 レイチェルが激しく一途な恋情をシャルディアラに寄せているのに対して、シャルディアラはレイチェルに特別な想いは微塵も抱いていないのだから…… 「あたしが愛しているのは弟たちだけよ。そんなこと、レイチェルも知ってるでしょう」 窓の近く、バルコニーの手前で足をとめて、シャルディアラは眼下にひろがる美しい庭園を見降ろした。 シャルディアラの私室に面したバルコニーはすべて小さな造り、部屋の中からでも城の広大な中庭が悠々と見渡せた。 萌黄色の芝生が、春の陽射しに照り映えて目にまぶしい。 「姫さまが私の気持ちに気づかぬふりをなさるのは、例の呪いのせいですか?」 幾分恨めし気な眼差しでシャルディアラをみつめ、レイチェルがぎゅっと拳を握りしめた。 からかうような微笑を消して、シャルディアラはスッと目を細めた。 白い可憐な美貌には、何の表情も浮かんでいない。 シャルディアラの心にも、さざ波ひとつたっていなかった。
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