第2章

29/36
前へ
/288ページ
次へ
あまりにもあっけらかんとシャルディアラが言ったので、レイチェルはその言葉に嘘がないと見抜いたようだった。 深い憂慮に翳っていた顔が、不服そうな表情を浮かべる。 レイチェルに白い横顔を見せたまま、シャルディアラは静かに言葉を継いだ。 「邪悪な精霊族を退治する上ではむしろ好都合だわ。強大な魔気を持つ連中がむこうから近づいてくるんですもの」 無表情だった可憐な美貌に、ひどくしたたかな色が滲む。 嘆かわしい、というように、レイチェルがおおげさに眉をひそめてみせた。 「呪いの力などなくても、姫さまには悪い虫がいくらでも寄ってくると思いますが。姫さまの頭には闘うことしかないんですか?」 「ほかに考えることがあって?」 シャルディアラは、そっけなく言葉を返した。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

380人が本棚に入れています
本棚に追加