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「姫さま」
レイチェルが、声の調子を変えて低く切り出した。
「姫さまが邪悪な精霊族退治に勤(いそ)しむのは、やはり父君のことがあるからですか?2年前、父君を亡くされたことを悔いているのですか?あれは、姫さまのせいではありません。父君の死に姫さまが責任を感じることはありません」
シャルディアラは、サッとレイチェルをふりむいた。
「あたしが緋竜の精霊王に拐われなければお父さまは死なずに済んだわ」
レイチェルは、2年前のことを知っている。
父王を亡くし、シャルディアラが悲嘆に暮れて眠れぬ日々を過ごしたことを…………
緋竜の城から助け出され、薔薇の妖精王国に還ってからしばらくの間は、シャルディアラは廃人のように夢と現の狭間をただたゆたっていた。
父を亡くしたショックがシャルディアラの心と体を深く蝕み、3ヶ月の間は腑抜けたように寝た切りの生活を送っていた。
そんな中で、さらなる悲劇が起こった。
一部の過激な古参格の重臣たちが、王が死んだのはシェリィのせいだとして、シェリィの胸を十字に切り裂いたのである。
アンジェラスもレイチェルも、そして、シャルディアラが信頼を寄せる臣下たちも、シャルディアラの身を案じて彼女につきっ切りの時……誰も、重臣たちをとめる者はいなかった。
幸い発見が早かったので、かなりの深手だったけれど大事には至らなかった。
しかし…………
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