第2章

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「姫さま……」 痛ましそうに眉をひそめて、レイチェルがきつく拳を握りしめた。 苦痛に耐えるような表情だった。 かすかな不快が胸を浸し、シャルディアラは片方の眉をつりあげた。 「そんな顔をしないで。同情なんて真っ平だわ」 「同情じゃありません!!」 キッと顔をあげて、レイチェルは熱い眼差しでシャルディアラをみつめた。 「私は姫さまの呪いを解いてみせます。何年かかっても、必ず……!!」 シャルディアラは、クスリと笑みをこぼした。 「それは自分のため?」 一瞬、レイチェルは激情を宿した瞳でシャルディアラを睨んだ。 それから、切な気に瞳を揺らしていとおしそうにシャルディアラをみつめた。 「呪いを解いた後で姫さまが誰と愛しあおうとかまいません。姫さまさえしあわせなら、私はそれで満足です」 真摯なきらめきをたたえた甘やかな瞳が、言葉よりも雄弁に彼の心情を吐露していた。 レイチェルが本心から言っているのだと、シャルディアラにもわかった。 彼の誠意が、一途な恋情が、シャルディアラの胸にひしひしと伝わってくる。
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