第2章

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アンジェラスの方が年上なのに、シャルディアラはわざとシェリィの名前を先に言った。 のみならず、眼差しにも口調にも明らかな含みがあった。 それに気づかぬほど、レイチェルも鈍くはない。 気まずそうに視線をそらして、レイチェルはきゅっと眉根を寄せた。 レイチェルもまた、シェリィのことを疑っているひとりだった。 2年前、緋竜の精霊族を手引きしたのはシェリィではないかと、胸に逆巻く疑念を捨て切れずにいるのだ。 そして、シャルディアラがいかに深くシェリィを愛しているか、いかにシェリィを大切に想っているかを知っているだけに、悶々と懊悩し、複雑な思いをシェリィに対して抱いているのである。 天真爛漫なシェリィの言動を見るにつけ、彼を信じたくなる反面、薔薇の妖精王国を守らねばならない騎士団長という立場上、そう簡単にシェリィに心を許すわけにはいかないのだろう。
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