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(ここは……?)
まだ覚醒し切らぬ意識の隅でぼんやり記憶を辿りながら、姫は視線をさまよわせた。
広々とした豪華な部屋。
しかし、どこにも窓がない。
ひと目で宮殿と知れる広さと豪華さだが、見る者の恐怖心を煽るような異様な内装が施されていた。
一定の間隔をあけて壁に掛けられた、たくさんの魔獣の仮面。
仮面の間を縫うように、光沢のある漆黒の布が壁の高い位置からさがり、シュールな空間を演出していた。
壁は血を思わせる真紅、吹き抜けの天井からさがる重厚なシャンデリアが、この不気味な部屋を煌々と照らしていた。
明らかに、人間や妖精の棲む城ではない。
邪悪な精霊族の男たちに襲われた記憶がまざまざと脳裏に甦り、深い絶望が姫の胸を浸した。
手首から伝わる冷たい枷の感触が、姫の絶望をいっそう深いものにした。
口には、大きな布でさるぐつわを噛まされている。
恐ろしい邪悪な精霊族に、囚われてしまったのだ。
「うっ!!ううっ!!」
無駄だと知りつつも、姫はさるぐつわを噛まされた顔を左右にふってもがいた。
「もがいても無駄だ。観念するんだな、薔薇の妖精姫」
ふいに、冷やかな声が響いた。
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