第3章

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「信じられませんわ。呪われた姫にこんなに大勢の殿方が群がるなんて……死ぬのが怖くないのかしら」 ふいに、ひときわかん高い声が、人垣の奥から響いた。 ざわっと非難めいたざわめきが、貴公子たちの間に起こる。 ゆったりあおいでいた羽根扇の手をとめて、シャルディアラも醒めた眼差しを声の主に送った。 取り巻く貴公子の群をかき分けて、背の高い姫君が高慢な表情で近づいてきた。 豊かな真紅の髪を高々と結いあげ、輝く金細工のティアラを戴いている。 健康的な小麦色の肌に切れ長の瞳、丸いだんご鼻、ぽってりとした唇……カトレアの妖精姫だ。 確かシャルディアラと同じ18才、舞踏会で顔をあわせるたびに何かとシャルディアラにつっかかってくる。 他国の姫君に妬まれて目の敵にされるのはいつものこと、シャルディアラは気にもとめていなかった。
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