第3章

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シャルディアラを取り巻いていた貴公子たちの間から、ダイアナを嘲る笑い声が起こる。 ダイアナの顔は、ますます蒼白になった。 小麦色の顔が、くやしそうに歪む。 「よ、よくも……よくもあたくしを侮蔑してくれたわね!!このことは決して忘れなくてよ。覚えてらっしゃい」 お決まりの捨て台詞を残して、ダイアナはくるりと踵を返し、靴音荒く歩み去っていった。 「ご覧になりましたか、ダイアナ姫のあのくやしそうな顔」 「いい薬ですよ。ダイアナ姫は高慢でわがままな姫君として有名ですから」 溜飲がさがったという表情で、貴公子たちが口々にそんなことを言った。 涼しい顔でそれを聞き流し、シャルディアラはちらりとレイチェルを見た。 「仕方のない姫ですね」という表情で、レイチェルは半ば呆れたようにシャルディアラをみつめていた。 だが、その口もとには、清々しい微笑が漂っている。 レイチェルもまた、日頃からダイアナの高慢な態度を苦々しく思っている貴公子のひとりだった。 ふいに、がっしりした体躯の男がレイチェルの側に寄り、耳もとに口を近づけてふた言み言ささやいた。 獅子の精霊の上流貴族、クラウドだ。 レイチェルはハッとした表情になって強く頷くと、彼の後について大広間を出ていった。
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