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次の日いつものように奈美がいるクラスの授業に行ったのだが、僕と目を合わせようとせず、変なタイミングで俯いたり、教科書で顔を隠す姿に違和感を覚えた。
もしかして昨日僕が無理強いして、イケメンから引き離してしまったことで、親に何か言われたのかもしれない。だから素っ気無い態度を、こうしてとらせてしまっているのかもしれないな――。
そんなことを気にしつつも、授業中に声をかけることができないので、内心悶々としながら黒板に向かった。
そして授業が終わり、どうやって奈美に事情を聞こうか考えあぐねているところに、隣のクラスの生徒に声をかけられる。話を聞きながら、手渡されたテストを見ていると。
「みっ、三木先生!」
顔を赤らめた奈美が、困った顔して僕に声をかけてきた。ナイスタイミングだと思いながら、反射的に微笑んでしまう。
「安藤どうした、さっきの授業の質問か?」
「えっと、あのぅ、ちょっと……」
言い出しにくそうにしてる奈美の姿に機転を利かせるべく、自ら口を開いてみた。
「山口悪い、この答案は預かっておくから。おまえは例の話があって、ここまで来たんだろ? 辞典返しに行くから、図書室について来い。そこで話を聞いてやる」
困惑したままの表情を浮かべる奈美を引きつれ図書室に向かうと、中に入ってすぐさま疑問を口にした。
「おまえさー、授業中といい今といい、なんか態度が変だぞー。もしかして昨日のこと、親父さんになにか言われたとか? 僕が結構無理強いして、イケメン御曹司から奈美を連れ去ってしまった件」
僕の質問を聞き、奈美は微妙な表情をキープしたまま、ふるふると首を横に振る。
「違うよ。そのことについては、向こうからこっちになにも言ってきてないし」
「じゃあ、その変な態度のワケは、いったいなんだ? 非常に気になるんだが」
グイッと顔を近づけるとあからさまに視線を外して、頬を赤らめさせ俯いた。
(むー、奈美のこの態度は、絶対になにかを隠しているようにしか見えない)
「なんだそりゃ! そうやって目を逸らすなんて、やましいことでもあるんじゃないのか? 怒らないから言ってみろ、ん?」
「やましいことなんて、全然なにもありませんって! そんな疑うような目で、まじまじと見ないでください……」
ついには僕に背中を向ける始末。絶対に怪しすぎる奈美の態度でさらなる追求をすべく、口を開きかけたら予鈴が鳴った。チッ、もう少しだったのに!
「あー、今日いつもの時間にウチに来い。どうもおまえの様子がおかしすぎる。じっくりと話を聞いてやるから、思いきって打ち明けろ。わかったな?」
「えっ、そんな――」
「もし来なかったら、安藤の家まで迎えに行くからなー」
徹底的に追い詰めれば、奈美はもう逃げられないだろう。自宅で聞き出してやるからな。
困った顔をした生徒を一瞥し、図書室を後にした。
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