Ⅵ ~ライバル参戦~

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「なんでそうなる!? むしろ、今虐められてんの俺じゃねえ!? くそっ! ヒナを味方につけやがって……ムカつくガキめっ」  子供である樹に対して、これ以上何か言うと自分が不利になる。ヒナの怒りを見て、類はそのことに気付いた。  凶悪面で樹を睥睨しながら、何も言えない悔しさに類は奥歯を噛みしめた。 「自分より年下の相手にそんな怖い顔で睨むなんて、類ちゃんこそ大人げないガキだよ。口悪いし、すぐおっきな声出すし。信じらんない! さっき珍しく優しかったからちょっとだけ見直したのに。やっぱり類ちゃんはいじめっ子だ。嫌い!」  ヒナが放った『嫌い』という単語に、類の顔がふにゃりと歪む。 「だよね。こんなヒドいこと言うオニイチャンなんて『嫌い』だよね。ヒナ、もう帰ろ。このオニイチャン、スゴく怖い。ヒナと同じでボクも『嫌い』だ。それに、一緒にいたら口が悪いのうつっちゃうよ」  樹は『嫌い』という単語をわざと繰り返し、類の傷を容赦なく抉る。  ふるふる震える類を横目に、樹は甘えるようにしてヒナの制服の裾を引っ張り、「早く帰ろ?」とにっこり微笑んだ。 「あ――――っ! も、マジでムカつくこのガキ!! ヒナ、気づけ! コイツ、かなりの性悪だ! 『口悪いのうつる』とか俺を病原体みたく言いやがったけど、このガキこそが諸悪の根源なんだからなっ! ヒナの体に出たじんましん、それ、そのガキがつけたキスマークだぞ!」  類は帰ろうとするヒナの背に向かい叫んだ。
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