Ⅵ ~ライバル参戦~

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「……『いじめっ子類ちゃん』。転校してきてすぐの頃、ヒナがしきりに話してた。ボク覚えてるよ。中学校に上がってからも、ずっとヒナにちょっかいかけてた幼稚な男だ。高嶺の花(ヒナ)に不毛な想いを抱き続ける邪魔な羽虫(類)なんて、みんな死ねばいいのに」  眸に隠しきれない憎悪をちらつかせながら、樹は一気にまくし立てる。 「挙句の果てには、ただのじんましんをキスマークだなんてイヤラシイ妄想ヒナに語って、ウブなヒナが恥ずかしがる姿を見たかっただけなんじゃないの? 一方的かつ一方通行な、自分の変態的妄想やら性的欲求不満やらをヒナに向けないで欲しいよ。ホント、アンタは『変態』という名の病原体だ。それも、パンデミックを起こしたスペイン風邪よりタチが悪くて粘着質。ヒナのじんましんも、アンタが卑猥(ひわい)で愚劣(ぐれつ)な菌、まき散らしたからじゃない?」 「はあ!? ひ、ひでえなオイ! 人を不審者や性犯罪者みたく言うな! それに、変態とか菌とか……それ絶対自分のこと言ってるだろ!? 責任転嫁してんじゃねえよ! マジでぶっ飛ばしてえ……このガキ!」  樹は「ボク知らない」と、ぷんと顔を背ける。  そして、これ以上余計なことを言い出しかねない類からヒナを遠ざけるべく、樹は彼女の腕をグイグイ引っ張って歩き出した。  「え、類ちゃんって変態なの?」と、ヒナはゾゾゾッと全身を粟立たせる。  飯島と河居の一件が頭を過ぎり、激しい嫌悪感がヒナを襲う。  生理的嫌悪を滲ませながら、ヒナは類を振り返った。  ヒナの目に混じる侮蔑の色に、類は泣きそうになりながら、「違う違うっ」と千切れんばかりに頭を振りまくる。  ヒナに不審者を見るような目を向けられてしまい、類は「誤解だヒナ――――っ! ちくしょーっ、クソガキめ、覚えてろ!!」と、負け犬の遠吠えの如く樹の背中に向け吠え立てるのだった。
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