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「この前はお料理失敗しちゃったけど、次は成功するかも知れないでしょ?」
そう言って、子供のようにあどけない表情で小春日和みたいにほわんと笑う。
……理解できない。
予測不能な行動を取るヒナは、はっきりいって面倒くさい。
本来なら関わりたくない人種のはずだった。
でも、どうだ。
今自分は、ヒナから目が離せない。
包丁を持ち寄り目になりながら真剣な顔でじゃがいもを剥く、彼女のすぐ目の前にはピーラーがぶら下がっているのに。あれを使えば有効に時間短縮が出来るのに。
気付いてないのか知っててやってるのか。
「ヒナ、ピーラーあるんだけど。ほら、そこ」
樹は我慢出来ずについ口を出してしまう。
「あ、うん。知ってる。でも包丁で剥くんだ。お母さんに練習しとかないとお嫁に行けないって言われちゃったからね」
そう言って、ヒナはにこっと眩しい笑みを向けてくる。
「……嫁なんて、ボクのとこに来たらいいじゃない」
冗談交じりだと誤魔化せないほど、樹は真顔で答えてしまう。
「あははっ、樹くんは面白いこと言うね」
「……面白い? なんでさ」
――――真剣なのに。
想いを否定されてしまったようで腹が立った。
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