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樹と同じ初等科の制服に身を包んだ愛らしい美少女が、ヒナ達の前で仁王立ちしていた。
彼女のツインテールに結った長い髪が、風になびいてふわりと舞う。
口を開けたまま呆然と美少女を見つめるヒナに、樹は舌打ちを鳴らした。
そして、ヒナの姿を隠すようにして樹は自分の前へと移動する。
「……杏璃」
現れた美少女に、樹はげっそりとした声を漏らす。
ヒナはびっくりして樹を見遣った。
「ちょっとアンタ! 話が違うんだけど!? 顔貸してくんない?」
くいっと顎をしゃくり「はよ来いオラ」というような横柄な彼女の態度に、ヒナは目を丸くする。
触れると壊れてしまいそうなほど繊細で華奢、そして、ひっそりと咲く小花のように愛らしい外見なのに、高慢な態度と険のある仕草とのギャップが激しすぎて。
きょとんとしたまま、ヒナは絶句してしまう。
「……話はガッコでいいじゃん」
面倒くさいという樹の態度に、美少女の眦が怒りでぎゅっと吊り上がった。
美少女の鋭い視線が、樹の背に隠されたヒナへと向けられる。
怒りが爆発する数秒前といった彼女の眼差しに、ヒナはビクッと戦いた。
「なにオンナ隠してんのよっ。あっ、そっか! その人ね、樹くんの言ってたヒトって。……ふうん」
捕らえた獲物を嬲るような彼女の冷たい笑みに、ヒナの肌がゾゾッと粟立つ。
瞬きする間に怒りを隠した美少女は、精巧に造られた人形じみた美しい笑顔を向けてきた。
「初めまして、ヒナさんですよね? あたし、樹くんの彼女の佐々木杏璃って言います。樹くんとはラブラブなので、邪魔しないで下さいね? オ・バ・サ・ン」
一本調子で流れるように、彼女はヒナに言い放った。
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