Ⅵ ~ライバル参戦~

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「杏璃が河居を襲った、あのわいせつな写真の存在はバレてないし、教員免許剥奪まではいかないだろーよ」  面倒くさそうに語る樹の態度に、杏璃はブルブルと全身を震わせ拳を握りしめながら、美少女と賞賛される容貌を一瞬で般若に変えた。 「……黙って聞いてりゃ……ふッざけんなッこの腹黒ヤローが! 悪いようにはしないっていったくせに、あたしを騙したね! 柊ちゃんに見せてた深窓の令嬢キャラがぶっ壊れそうだわ! 今回の件、どう落とし前つけてくれんの!?」 「……恋に狂ったオンナは怖いねぇ。登校拒否で実の叔父である河居の気を引いて、同情誘ってあのオッサンとの既成事実、虎視眈々と狙ってたオンナが深窓の令嬢って笑わせるよ。まあ、脅しに使うネタが欲しいなら、後でファイル送るけど?」 「柊ちゃんのカラダ目当てみたいに言うのやめてくれる!? ……ってか、ファイルってなによ」  樹の言葉に杏璃がピクリと反応する。  樹はしたり顔でふふっと肩を揺らした。 「大学時代に遊びで撮影した、えっちぃ映像?」 「……なんでそんなもんアンタが持ってんのよっ」 「河居の元カノから買った。ちなみにそれ、飯島センセじゃないから」  直接交渉をしたのは、父親の秘書をしている里中徹という男だが、それは言わずに、樹はニッと半月型に唇を歪ませた。  さあ、どうする? と、樹は空々しい笑みを刷きながら、杏璃の出方をうかがう。
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