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「腹立つけど……気になるじゃない。――――いいわ、送って。柊ちゃんがあたしを拒むなら、樹くんに渡した写真同様、脅しの奥の手として使わせてもらうわ。手持ちの駒は多い方が良いからね」
イライラと樹を睨め付けながら、杏璃は舌打ち混じりに吐き捨てる。
その言葉に、樹はほくそ笑んだ。
「さっきの『彼女発言』、アレはタチの悪い冗談でしたって、きっちりヒナに説明してもらうからな」
「わーったわよ。……チッ」
自称・深窓の令嬢は、黒目がちなくりっとした猫目を樹から逸らし、そのままきびすを返して去ってしまった。
怒りのあまり上下左右に揺れまくる彼女のツインテールを一瞥(いちべつ)しながら、樹は疲れを吐き出すようにして溜息をこぼす。
「……ホント、余計なことしてくれたね。あのオンナ」
せっかくの苦労が全てぶち壊しになるじゃないか。
忌々しいと眉根を寄せる。
「まあ、騒ぎが大きくなるのは予想通りなんだけどね」
ヒナの興味を惹いた初めての男、河居など、この学園からさっさと消えてしまえ。
真剣にそう思う。
だからこそ、あの男を失職に追い込むよう画策したのだから。
――――あの担任女教諭を使って。
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