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樹はふっと嗤った。
誰が傷つこうとかまわない。
何を犠牲にしても、自分には欲しいものがあったから。
他に目を向ける余裕などなかった。
ただ指をくわえて、ヒナが他の男に奪われる様を見ているつもりなど毛頭ない。
だから樹は、ヒナが他の誰かに恋をする時間など与えず、誰かが彼女に恋することがあれば事前に潰していたのだ。
――――今回のように。
それが悪いとは思わない。
樹には、ヒナさえいれば他のものなど必要なかった。
彼女さえ自分を愛してくれれば、他に何も望まない。
餓(かつ)えるほどに、ヒナだけが欲しかったのだ。
「……ホント、病んでるよね」
自嘲に唇を歪めると、樹は学校へ向かうべく足を進めた。
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